健康診断

健康診断の項目|その1-2:血液による検査(脂質代謝)

hyaaajiro@moriya

こんにちは、ナミキです!

今回は前回(血液による検査:糖代謝)に引き続き、「脂質代謝」による検査項目について整理してみました。

  1. 血液による検査(糖代謝・脂質代謝・血液一般) ➡︎今回は脂質代謝
  2. 血液による検査(肝臓機能・腎臓機能・痛風)
  3. 尿・糞便による検査
  4. 体外測定による検査(体組成・視力・聴力など)
  5. 体内測定による検査(腹部超音波・心電図など)

脂質代謝の項目は、みなさんも一番馴染みのある項目かもしれませんね。そうです、「中性脂肪」や「コレステロール」などです。

テレビのCMなどでもよく耳にしますよね?「中性脂肪が気になる方に、、、」「コレステロールが高めの方に、、、」「善玉コレステロール」「悪玉コレステロール

脂質代謝は、「高脂血症」「動脈硬化」「糖尿病」「脂肪肝」などの病気に関わるものとなっているのです。とは言われても、脂質のことをそんなに理解していないんだよなという方もいらっしゃるかと思います。そこで、今回は脂質の基本的なことも踏まえながらまとめてみました!

定期健康診断の検査項目ではないですが、検査する可能性が高いものについても「※」で追記しておりますので、合わせてご確認ください。なお追加で受診できる特殊な項目(人間ドックなどの検査項目)については、受診先のお医者様に詳細な内容をお聞きしていただけると幸いです。

前置きはここまでにしておいて、、、早速見ていきましょう!

①脂質代謝検査|中性脂肪(TG:Triglyceride

判定区分中性脂肪(TG)
高トリグリセライド血症
(空腹時:10時間以上の絶食)
150 mg/dL以上
高トリグリセライド血症
(随時)
175 mg/dL以上
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

中性脂肪は、私たちが生活をする上で重要なエネルギー源の一つです。中性脂肪の元となるものとしては、もちろん食物中の油脂もありますが、それ以外に糖質があります。

そのため、炭水化物もしくは甘いもの(糖質)を極端に多く食べると、肥満になっていくのです。そこで巷では「糖質制限」などのダイエット法があるのですが、これも極端に行ってしまうと健康を損ねてしまうこともあるので適度さが重要になります。

以上からもわかるようにこの検査項目では、動脈硬化や生活習慣病などのリスクを推測することができます。

②脂質代謝検査|総コレステロール(TC:Total Cholesterol

判定区分総コレステロール(TC)値
基準値140~220 mg/dL
境界値201~219 mg/dL
出典:糖尿病診断基準|一般社団法人日本糖尿病学会

コレステロールは脂質の一つであり、体内では細胞膜の成分各種ホルモンや胆汁酸の材料としての役割があります。

コレステロール自体は脂質なので、水に溶けることができません。そのため、水を主成分とする血液中では、コレステロールを水に溶けやすくする必要があります。

そこで登場するのが「リポタンパク質」です。これは、脂質が血液中に存在できるように球状の形態となっており、球状の外側部分がタンパク質(水溶性)、内側部分が脂質(不溶性)という構造になっております。

リポタンパク質の種類としては、大きく5つに分類することができます。以下に示す、①から⑤の順になるに連れて、タンパク質の割合が増え、脂質の割合が増加します。

  1. カイロミクロン
  2. VLDL(Very Low Density Lipoprotein)
  3. IDL(Intermediate Density Lipoprotein)
  4. LDL(Low Density Lipoprotein)
  5. HDL(High Density Lipoprotein)

さらに血中のコレステロールの70~80%は脂肪酸と結合する「エステル型」として、残りの20~30%は非エステル型「遊離型」として存在しており、これらの合計を総コレステロールと呼んでいるのです。

コレステロールは先ほどにも述べたように、私たちの身体にとって重要な成分の一つです。しかし、それらが多すぎたり少なすぎたりすると身体に悪影響を及ぼす可能性があります。そこで総コレステロールを測定し、まずはざっくりと動脈硬化などの恐れがないかを検査しているのです。

③脂質代謝検査|HDLコレステロール(HDL-C:High Density Lipoprotein Cholesterol

判定区分HDLコレステロール(HDL-C)
低HDLコレステロール血症40 mg/dL未満
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

さて、先ほど総コレステロールについて紹介しましたが、その中でも善玉コレステロールと呼ばれるものがHDLコレステロールです。このHDLコレステロールとは、血液中に増えたり溜まったりしているコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをしています。

HDLコレステロールを下げる原因としては、運動不足や喫煙などが挙げられるそうです。1)

④脂質代謝検査|LDLコレステロール(LDL-C:Low Density Lipoprotein Cholesterol

判定区分LDLコレステロール(LDL-C)
高LDLコレステロール血症140 mg/dL以上
境界域高LDLコレステロール血症120〜139 mg/dL
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

HDLコレステロールのように善玉があるのであれば、もちろん悪玉もあります。それがLDLコレステロールです。LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを血液を通して全身へ運ぶ役割をしています。

血液中のLDLコレステロールが増えすぎると血管壁に溜まっていきます。そして活性酸素の酸化作用により過酸化脂質になり、それが蓄積すると血管が細くなり血栓ができ動脈硬化を進行させます。2)

【ちょこっと豆知識】

LDL-Cを直接測定しない時もあるかもしれません。その際は、Friedewald式(フリードワルド式)により、LDL-Cの推定値の算出を行うことができます。

LDL-C = TC – HDL-C – TG/5

※空腹時採血かつTGが400mg/dL以下の際に使用することができる。

出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

⑤脂質代謝検査|non-HDLコレステロール(non-HDL-C:Non High Density Lipoprotein Cholesterol

判定区分non-HDLコレステロール
(non-HDL-C)
高non-HDLコレステロール血症170 mg/dL以上
境界域高non-HDLコレステロール血症150〜169 mg/dL
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

さて、この章の最後に紹介するのはnon-HDLコレステロールになります。名前からもわかるように、これは総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いたもののことです。

従来では悪玉コレステロールはLDLコレステロールのみと考えられていたのですが、近年では動脈硬化のリスクを総合的に判断するにはLDLコレステロール以外に中性脂肪の豊富なリポタンパク質(VLDLやIDLなど)も考慮に入れるべきという考えから、non-HDLコレステロールが注目されるようになったのです。

まとめ

今回は、定期健康診断における血液検査の項目、特に脂質代謝についてまとめてみましたが、いかがでしたか?

健康診断の様々な項目の中でも、まずは目を通す項目なのではないでしょうか?その中でもまずは「中性脂肪」と「総コレステロール」に注目するといいかもしれませんね。

以下に、今回の内容をざっくり整理しておきますね。

判定区分中性脂肪(TG)
高トリグリセライド血症
(空腹時:10時間以上の絶食)
150 mg/dL以上
高トリグリセライド血症
(随時)
175 mg/dL以上
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
判定区分総コレステロール(TC)値
基準値140~220 mg/dL
境界値201~219 mg/dL
出典:糖尿病診断基準|一般社団法人日本糖尿病学会
判定区分HDLコレステロール(HDL-C)
低HDLコレステロール血症40 mg/dL未満
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
判定区分LDLコレステロール(LDL-C)
高LDLコレステロール血症140 mg/dL以上
境界域高LDLコレステロール血症120〜139 mg/dL
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
判定区分non-HDLコレステロール
(non-HDL-C)
高non-HDLコレステロール血症170 mg/dL以上
境界域高non-HDLコレステロール血症150〜169 mg/dL
出典: 脂質異常症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

次回は定期健康診断における「その1-3:血液による検査(血液一般)」についてまとめていきたいと思います!

それでは今回はこの辺で。。。(パタリ)

参考資料

1)HDLコレステロール | e-ヘルスネット(厚生労働省)

2)LDLコレステロール | e-ヘルスネット(厚生労働省)

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ナミキ
ナミキ
食品の「栄養化学」「食品生理機能学」に関する研究者
こんにちは、ナミキと申します!
私は京都大学で食品成分が持つ栄養やそれらが生体に及ぼす効果に関する研究を行っておりました。
そして現在は企業で食品の成分が持つ機能性についての研究をしております。

このサイトでは、食品の成分がどのような機能性を持っているのか、身体にどのような作用を及ぼすのかを体系的に学ぶことができるよう、情報発信をできればと思っております。
情報源としては、各省庁や各学会のホームページ、市販されている諸先生方の書籍、医学系文献データベースのPubmedなどを用いて、身近な物事について触れていきたいと思います。

基本的なことから少し踏み込んだことも含め、少しでも皆さんの日常生活に役立つような情報となれば幸いです(^^)
よろしくお願いします!
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