健康診断の項目|その2-1:血液による検査(肝臓機能)
こんにちは、ナミキです!
今回は前回(血液による検査:血液一般)に引き続き血液による検査で、肝臓機能の指標について整理してみました。
- 血液による検査(糖代謝・脂質代謝・血球)
- 血液による検査(肝臓機能・腎臓機能・痛風) ➡︎今回は肝臓機能!
- 尿・糞便による検査
- 体外測定による検査(体組成・視力・聴力など)
- 体内測定による検査(腹部超音波・心電図など)
肝臓は、私たちの身体の代謝(食品成分の化学変化やエネルギー変換など)の要であることから、肝臓の機能が低下すると様々な病気につながる可能性が高くなります。そこで、毎年の健康診断で、肝臓機能が低下していないかをまずはセルフチェックできるように、今回の記事が役に立てば幸いです。
それでは早速見ていきましょう!
目次
①肝臓機能検査|AST:Aspartate aminotransferase(GOT:Glutamic oxaloacetic transaminase)
判定区分 | AST(GOT)値 |
---|---|
基準値 | 30 IU/L以下 |
要注意 | 31~50 IU/L |
異常 | 51 IU/L以上 |
ASTはアミノ酸の生成に関わる酵素であり、肝臓だけではなく腎臓や筋肉などの細胞にに含まれています。これらの細胞が何かの障害を受けたりすると、細胞からASTが漏れ出て、血中に流れ出ていきます。
すなわち、血中のASTの値が高くなるということは、肝臓もですがその他の臓器も何か障害を受けている可能性が高いということです。
②肝臓機能検査|ALT:Alanine aminotransferase(GPT:Glutamic pyruvic transaminase)
判定区分 | ALT(GPT)値 |
---|---|
基準値 | 30 IU/L以下 |
要注意 | 31~50 IU/L |
異常 | 51 IU/L以上 |
ALTもASTと同様にアミノ酸の生成に関わる酵素なのですが、ALTはとりわけ肝臓に多い酵素となっております。
そのため、血中のALTの値が高いということは、肝臓に何か障害が起きている可能性が高いということになるのです。
③肝臓機能検査|AST/ALT比
判定区分 | AST/ALT比 |
---|---|
肝疾患の可能性 | AST < ALT |
肝疾患以外の可能性 | AST > ALT |
さてASTとALTを理解することができれば、AST/ALT比の意味についてもすでにお気づきかもしれません。
ASTとALTの値が基準値よりも上回っている場合、まずは肝臓の疾患を疑い、その後AST/ALT比に着目していきます。ASTとALTの上昇の度合いを比較することで、疾患を絞り込んでいくということですね。
ただセルフチェックという観点では、AST/ALT比までは気にしない方がいいかなと思います。もしそれでも気になるようであればお医者様に相談するというのが一番いいかと思います。
④肝臓機能検査|γ-GTP:γ-Glutamyl transpeptidase
判定区分 | γ-GTP値 |
---|---|
正常値(男性) | 50 IU/L以下 |
正常値(女性) | 30 IU/L以下 |
γ-GTPについても、ASTやALTと同じように肝臓が障害を受けた際に、血中に流れ出てくる酵素になります。またγ-GTPは胆道から分泌され、肝臓の解毒作用に関わっております。
肝臓から処理済みの老廃物は胆管を通して十二指腸に排泄されますが、胆道が胆石やがんなどによって詰まると、逆流して血中濃度が上がります。1)
さらにγ-GTPはASTやALTとは異なり、飲酒量に相関していることから、アルコール性肝炎の指標に役立つ項目となっております。
⑤肝臓機能検査|総ビリルビン(T-BIL:Total Bilirubin
判定区分 | 総ビリルビン(T-BIL)値 |
---|---|
基準値 | 0.2~1.2 mg/dL |
ビリルビンは赤血球に含まれる黄色い色素で、赤血球が寿命を迎えると脾臓で分解されて出てきます。これを間接ビリルビンといいます。
間接ビリルビンは肝臓で処理され、直接ビリルビンとなります。この直接ビリルビンは、胆汁の成分(色素)として胆管から十二指腸に入り、食品中の脂肪の消化に関わりながら便に含まれ排泄されます。2)
肝臓の機能が障害されると間接ビリルビンを処理できなくなるため、血液中に間接ビリルビンが大量に残り、これに伴って皮膚が黄色くなる「黄疸」を発症します。一方、胆道系の障害により胆汁の排泄が不十分になると、血液中には直接ビリルビンが増加します。したがって、直接ビリルビンと間接ビリルビンの数値をみると、黄疸の原因がどこにあるのかを推察できます。3)
間接ビルルビンと直接ビリルビンを合計したものを「総ビリルビン」と呼びます。実際の検査では、直接ビリルビンと総ビリルビンとを測定して、その差から間接ビリルビンを算出します。総ビリルビンの検査値のみからは、特定まではできませんが、肝臓・胆道・胆管異常の可能性が高いと言えます。
⑥肝臓機能検査|総タンパク質(TP:Total Protein
判定区分 | 総タンパク質(TP)値 |
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異常 | 6.1 g/dL以下、8.4 g/dL以上 |
要注意 | 6.2~6.4 g/dL、8.0~8.3 g/dL |
基準値 | 6.5~7.9 g/dL |
食品に含まれるタンパク質は、体内で消化吸収されるとアミノ酸となり、主に肝臓で体に必要な形のタンパク質に再合成されて、血液中に流れていきます。
すなわち血液中の総タンパク質の値が異常の場合、肝臓に異常がある可能性が高いと言えます。また血液の濾過機能である腎臓についても異常があった場合、血液中のタンパク質を濾過できなくなり尿に漏れ出ていくため、血液中の総タンパク質の値が減少することもあります。
したがって、血液中の総タンパク質の値からは、肝臓や腎臓に異常があるかどうかなどざっくりとした指標になるということです。
まとめ
今回は、定期健康診断における肝臓機能の項目についてまとめてみましたが、いかがでしたか?
肝臓は身体の化学工場とも言われるくらい、栄養成分を適切な形に作り変えたり、毒素を分解したりなど、24時間働き続けてくれる臓器です。休肝日という言葉もあるように、たまには肝臓を休ませることもやはり大事だということですね。
以下に、今回の内容をざっくり整理しておきますね。
判定区分 | AST(GOT)値 |
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基準値 | 30 IU/L以下 |
要注意 | 31~50 IU/L |
異常 | 51 IU/L以上 |
判定区分 | ALT(GPT)値 |
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基準値 | 30 IU/L以下 |
要注意 | 31~50 IU/L |
異常 | 51 IU/L以上 |
判定区分 | AST/ALT比 |
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肝疾患の可能性 | AST < ALT |
肝疾患以外の可能性 | AST > ALT |
判定区分 | γ-GTP値 |
---|---|
正常値(男性) | 50 IU/L以下 |
正常値(女性) | 30 IU/L以下 |
判定区分 | 総ビリルビン(T-BIL)値 |
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基準値 | 0.2~1.2 mg/dL |
判定区分 | 総タンパク質(TP)値 |
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異常 | 6.1 g/dL以下、8.4 g/dL以上 |
要注意 | 6.2~6.4 g/dL、8.0~8.3 g/dL |
基準値 | 6.5~7.9 g/dL |
次回は定期健康診断における「血液による検査(腎臓機能)」についてまとめていきたいと思います!
それでは今回はこの辺で。。。(パタリ)
参考資料
2)祝田 靖・深見 公子「病院で受ける検査と数値がわかる事典」, 成美堂出版, 2017年12月, 56-57ページ
3) 総ビリルビン | 肝臓に関する検査の一覧 | 肝炎.net