健康診断の項目|その2-2:血液による検査(腎臓機能)
こんにちは、ナミキです!
今回は前回(血液による検査:肝臓機能)に引き続き腎臓機能の検査項目について整理してみました。
- 血液による検査(糖代謝・脂質代謝・血球)
- 血液による検査(肝臓機能・腎臓機能・痛風) ➡︎今回は腎臓機能!
- 尿・糞便による検査
- 体外測定による検査(体組成・視力・聴力など)
- 体内測定による検査(腹部超音波・心電図など)
腎臓は、私たちの身体の水分調節や老廃物の処理などを行う非常に重要な臓器です。腎臓自体は急激に悪くなるということはあまりないようですが、腎臓中のある細胞は一度壊れてしまうと修復ができないため、年齢とともに悪化していくことになります。
毎年の健康診断で、腎臓機能に関わる項目の数値が良いのか悪いのかを、まずはセルフチェックできるように、今回の記事を参考にしていただければ幸いです。
それでは早速中身を見ていきましょう!
目次
①腎臓機能検査|総タンパク質(TP:Total Protein)
判定区分 | 総タンパク質(TP)値 |
---|---|
異常 | 6.1 g/dL以下、8.4 g/dL以上 |
要注意 | 6.2~6.4 g/dL、8.0~8.3 g/dL |
基準値 | 6.5~7.9 g/dL |
この項目は前回(血液による検査:肝臓機能)でもご紹介したように、血液の濾過機能である腎臓について異常があった場合、血液中のタンパク質を濾過できなくなり尿に漏れ出ていきます。それにより、血液中の総タンパク質の値が減少することがあるのです。
すなわち血液中の総タンパク質の値は、肝臓や腎臓に異常があるかどうかなどざっくりとした指標になるということです。
②腎臓機能検査|血液尿素窒素(BUN:Blood Urea Nitrogen)
判定区分 | 血液尿素窒素(BUN)値 |
---|---|
基準値 | 10~24 mg/dL |
タンパク質(食事由来・身体の組織由来)は分解されるとアンモニアが作られますが、アンモニア自体は有害であるため、肝臓で尿素に作り変えられ無害化しています。
尿素は腎臓で濾過されて尿として排泄されますが、腎臓機能が低くなると濾過できなくなり血液中の尿素量が増えることから、腎臓機能の状態を知る指標となっております。
ただ実際には、尿素中の窒素を分析しているため、血液尿素窒素と呼んでいるのです。
③腎臓機能検査|クレアチニン(CRE:Creatinine)
判定区分 | クレアチニン(CRE)値 |
---|---|
基準値(男性) | 0.61~1.04 mg/dL |
基準値(女性) | 0.47~0.79 mg/dL |
クレアチニンとは、アミノ酸の一種であるクレアチンが代謝された後の老廃物のことです。クレアチンは肝臓でクレアチンリン酸という成分に変換され、血液中に入って筋肉に運ばれます。そしてこのクレアチンリン酸は、高強度のトレーニングなどの無酸素運動を行う際に、素早くエネルギーを生み出してくれる成分となっています。1) このクレアチンリン酸が使われた後に、クレアチニンに変換されるのです。
クレアチニンはその後、血液を介して腎臓で濾過されて尿中に排泄されます。一方、腎臓の機能が低下すると、クレアチニンがうまく濾過されなくなり、血液中のクレアチニン量が増えてしまうということです。このことから、クレアチニンは腎臓機能の状態を知る指標となります。
【ちょこっと豆知識】
クレアチニンの基準値に関して、男性の方が女性よりも高く設定されています。これは、男性の方が一般的に女性よりも筋肉の量が多いため、その分クレアチニン産生量も多くなるためです。
また加齢に伴い、筋肉量が減っていくので、年齢が高い人ほどクレアチニン量が低くなる傾向にあります。
④腎臓機能検査|糸球体濾過量(GFR:Glomerular Filtration Rate)※追加項目
GFR区分 | 判定区分 | 糸球体濾過量(GFR)値 (mL/min/1.73m2) |
---|---|---|
G1 | 正常または高値 | ≧90 |
G2 | 正常または軽度低下 | 60~89 |
G3a | 軽度〜中等度低下 | 45~59 |
G3b | 中等度〜高度低下 | 30~44 |
G4 | 高度低下 | 15~29 |
G5 | 末期腎不全(ESKD) | <15 |
GFRとは、腎臓の中にある毛細血管の集合体である糸球体が、1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示す値です。2)
正確なGFR(糸球体の濾過機能)を測定するために、クリアランス検査というものがあります。特に、イヌリンクリアランス検査(イヌリン摂取による測定)とクレアチニンクリアランス検査(血液中クレアチニン値による測定)が代表的です。
イヌリンとはゴボウ・キクイモ・タマネギなどに含まれる水溶性食物繊維であり、体内で分解できず、腎臓の糸球体で100%濾過されます。この性質を利用して、イヌリンクリアランス検査では、イヌリンを点滴投与して一定時間後の血液中と尿中のイヌリン量を測定することで、糸球体の濾過機能を把握することができます。
一方、クレアチニンクリアランス検査では、上述したように既に体内にある成分のクレアチニンについて、血液中と尿中のクレアチニン量を測定することで、糸球体の濾過機能を把握することができますが、筋肉量や年齢によってクレアチニン量が変化するので注意が必要です。
これら二つの検査に関して、正確性は高いものの、24時間もしくは2時間の尿を溜める必要があり、簡単にはできない検査となっております。
そこで、健康診断などではeGFR(推算糸球体濾過量:estimated glemerular filtration rate)というものが利用されています。これは、多くの人のクリアランス検査の結果をもとに作られた指標で、血清クレアチニン値、年齢、性別から推算するものになっております。
近年では、筋肉量や年齢での影響を受けにくいとされる、血液中のシスタチンC(タンパク質)の値を用いて計算することもあります。
【ちょこっと豆知識】
eGFRの計算式(血清クレアチニンを用いて)
- 男性:eGFRcreat(mL/min/1.73㎡)=194×CRE(mg/dL)-1.094×年齢(歳)-0.287
- 女性:eGFRcreat(mL/min/1.73㎡)=194×CRE(mg/dL)-1.094×年齢(歳)-0.287×0.739
eGFRの計算式(血清シスタチンCを用いて)
出典:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018|日本腎臓学会
- 男性:eGFRcys(mL/min/1.73㎡)=(104×Cys-C(mg/L)-1.094×0.996年齢(歳))-8
- 女性:eGFRcys(mL/min/1.73㎡)=(104×Cys-C(mg/L)-1.094×0.996年齢(歳)×0.929)-8
まとめ
今回は、定期健康診断における血液検査の項目についてまとめてみましたが、いかがでしたか?
腎臓は一度悪くなると、元に戻らない臓器と言われますが、非常にタフな臓器のため、若い時にはその症状を把握しにくいとされています。毎年の健康診断の値をきっちりと理解して、自身で腎臓機能の状態を把握できるようにしておくことが非常に重要になるかと思っております。
以下に、今回の内容をざっくり整理しておきますね。
判定区分 | 総タンパク質(TP)値 |
---|---|
異常 | 6.1 g/dL以下、8.4 g/dL以上 |
要注意 | 6.2~6.4 g/dL、8.0~8.3 g/dL |
基準値 | 6.5~7.9 g/dL |
判定区分 | 血液尿素窒素(BUN)値 |
---|---|
基準値 | 10~24 mg/dL |
判定区分 | クレアチニン(CRE)値 |
---|---|
基準値(男性) | 0.61~1.04 mg/dL |
基準値(女性) | 0.47~0.79 mg/dL |
GFR区分 | 判定区分 | 糸球体ろ過量(GFR)値 (mL/min/1.73m2) |
---|---|---|
G1 | 正常または高値 | ≧90 |
G2 | 正常または軽度低下 | 60~89 |
G3a | 軽度〜中等度低下 | 45~59 |
G3b | 中等度〜高度低下 | 30~44 |
G4 | 高度低下 | 15~29 |
G5 | 末期腎不全(ESKD) | <15 |
次回は定期健康診断における「血液による検査(痛風)」についてまとめていきたいと思います!
それでは今回はこの辺で。。。(パタリ)
参考文献
1)クレアチンリン酸 / CrP | e-ヘルスネット(厚生労働省)
2) CKD / 慢性腎臓病 | e-ヘルスネット(厚生労働省)